Trankiel  Groningen - Japan
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墓地の集会所 Heidehof(ハイデホフ)、アペルドールン - 写真:Jeroen Musch ©
 
 
建築家 吉良森子さん と フローニンゲン

フローニンゲン市も住民も素晴らしい
 
 吉良森子さんは1965年に東京で生まれました。早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、同大学院に進み、デルフト工科大学建築学科に2年間留学します。彼女はその理由として、近代からの建築の文化が育っていること、英語で奨学金が得られたこと、Rem Koolhaas(レム・コールハース)がその年そこで教えることになっていたこと、を挙げます。デルフト工科大学は、まさに「いるべき所」でした。彼女にとってここでの学びは、とても充実した素晴らしいものとなります。
 
 吉良森子さんは、デルフトで学んだ後日本に戻り、大学院を修了後、1990年から1992年までユニテ建築設計で働きます。
 しかし、レム・コールハースのスタジオでの1年間の素晴らしさが忘れられず、まもなく、オランダに戻ってそこで仕事をすることを決意します。ちょうど、コールハースのアシスタントをしていた
Ben van Berkel(ベン・ファン・ベルケル)が自身の事務所を始めていて、彼女を喜んで迎えてくれました。それは、大変実りがあり又楽しく働けただけでなく、アムステルダムでの彼女自身の事務所開設をもたらしました。そしてその事務所の仕事は、すぐに拡張されていきます。現在、彼女自身の他に、3人のオランダ人の若い建築家がスタッフとして働いています。
 
 吉良森子建築事務所は、彼女の設計による多くの建築を手掛けていますが、その中のいくつかはフローニンゲンでのものです。その他、Apeldoorn(アペルドールン)の同名の墓地の集会所 Heidehof(ハイデホフ)や、アムステルダム東部の IJburg(アイブルフ)地区の集合住宅、ライデンのシーボルトハウスのリノベーション等が挙げられます。
 

シーボルトハウスのリノベーション、ライデン - 写真:Luuk Kramer ©
 
 フローニンゲン市では、2006年に、後に賞を得た Europapark(エウロパパーク)の18軒の戸建住宅 P.O. de Linie(リニー)や Coehoornsingel(クーホールンシンゲル)のレモンストラント派教会の中に Stichting Oude Groninger KerkenSOGK:協会・古いフローニンゲンの教会)の新しい事務所を設計し、彼女の名前が知られるようになりました。その2年後には、Eelderplein(エールダープレイン)の13軒続きの家を設計。これは KUUBセンターの民間住宅プロジェクトで、エールダープレイン組合の注文によるものでした。又最近では、昨年(2010年)完成した Eridanusstraat(エリダーヌス通り)の27の住宅があります。これは、
Vereniging Achter De Reitdijk(アハター・デ・ライトダイク組合)と上述の KUUB が共同で注文したものです。
 
 では、彼女はいつどのようにして、最初にフローニンゲン市と知り合ったのでしょうか?
 
 森子さんは、それは2003年のことだったと話します。彼女はその年、市で開催された「Blue Moon」プロジェクトに参加していた建築家、伊東豊雄さんのアシスタントとして、フローニンゲン市にやって来ました。それは、とても素晴らしい出会いで、市自体だけでなく、そこの人々の印象も、とても良いものでした。まず、フローニンゲン市がインナーシティに投資し続けていて市の密度が高められていること。又、様々な建築スタイルが受け入れられていることも、目立っていました。20世紀の初めにフローニンゲンで人気のあったアムステルダム・スクール様式については、その職人の技術や当時の新しいアイデアを評価します。デザインもとても美しいのですが、今日ではそのような職人も得難く、装飾の手仕事は大変高価なものになるので、そのような建築は無理であること。しかし、その素材やディーテールのもつ表現の美しさは使っていきたい、と話します。
 これらよりもっと彼女がインスピレーションを得たのは、フローニンゲンの Onix(オニックス:建築事務所)の仕事です。ユニークなデザインがとても造形的なことや、木材とかローカルな材料を使っていることに、とても惹かれています。
 
 日本とオランダの建築の違いについて。それが、彼女のオランダでの建築、例えばフローニンゲン市での建築にも見られるのかどうか、興味津々です。
 
 大きな違いは、家やその他の建物の建設の仕方に見られます。
 日本の建物は内から外へと考えます。まず内部空間を創造し、そこから自然に外側の形が生まれます。
 このため、彼女にとって重要なことは、その中で暮らす人自身のライフスタイルを知ることです。又、空間と空間のつながりを大切にし、どれだけの光を内部に取り入れられるかも考慮します。
 そして、日本とオランダ(西洋)のオーセンティックな建築方法を比べると、はっきりした違いがあります、とつけ加えます。
 西洋では、いつも外壁が最初に建てられ、外側から始められます。しかし、日本の建築では柱から始められ、それでまずオープン空間が創られます。西洋と比較して日本の建築は、異なる空間の間の関係や、内と外との関係に、より多くの関心を払っています。


真鶴共生舎(木の家)、神奈川県
写真:淺川 敏
©
 
 今日の建築で、まだ他の違いもあるのでしょうか? 生活様式とは関わっていないのでしょうか?
 
 森子さんは、大きな違いの一つは発注者だと話します。日本では個人が施主であることが多いのに対して、オランダではたいてい住宅団体からの受注です。
 そして又「オランダ人は表の庭はオープンにするけれど、裏庭はプライバシーを充分楽しむため外から見られたくない、という傾向があります。夏によく行われる日光浴やガーデンパーティ、バーベキューのことを考えてみてください。日本人には、このような庭で楽しむ習慣はないので、表と裏の違いはありません。日本人はここの人たちと比べて、自分たちのプライベートな生活にはあまり価値を置いていないと考えられます。日本人は多くの場合仕事を人生におけるミッションとみなしていて、ここオランダほど仕事とプライベートライフをはっきり区別していません。」と話します。

 
 先に述べられたフローニンゲンの人たちのことに、少し戻りたいと思います。何に惹かれるのでしょうか?
 
 森子さんは、仕事をした他の場所と比べ、フローニンゲンでは可能でないと思われたことも出来た、と話を始めます。
 「フローニンゲン市では、どんな難しいことでも率直に話し合い、それをポジティブにつなげていきます。楽観的に、また合理的に、仕事を進めていきます。これに加えて、フローニンゲンの人は無駄なことに時間をかけず、その代わり、目的に向かって効率よく、皆で良い方向にもっていくことが出来ます。他の場所で経験したような無意味な議論はしません。フローニンゲンには一体感があり、私はそれが好きです。プロジェクトに関して、お互いのベストの意図を尊重し合えることが素晴らしいです。それは関わる人すべて、工事の人たちまでも、です。ビジネスの上でも、予算や工事期限に関しても、上手くいっています。これは一度だけの経験ではないので、『私が単にラッキーだった』と見ることは出来ません。
 その一つの例を話しましょう。私がレモンストラント派教会の横に加えた建物を設計した時、美観委員会は私が提出したものを条件を付けることなく許可してくれました。私を信頼してくれたということだけでなく、提出した設計に同意し、その実際の内容に許可を与えてくれたのです。私は、妥協することなく全力で仕事に取り組めると感じました。他の場所ではこれとは違った経験をしていることを、もう一度言っておきます。」

 
吉良森子さん - 写真:Hotze Eisma ©
フローニンゲン市のレモンストラント教会
写真:
Christian Richter ©
 
 ところで、1878年からの歴史ある教会に関わる建築は、初めてのことだったのでしょうか?
 
 彼女はこれまで教会などの建物だけでなく、宗教に関わることは全くなかったので、このプロジェクトの最初はとても不安でした。デザインミーティングの時から教会の人たちに参加してもらったのですが、彼女自身、宗教に関わっている人たちは古い伝統を大切にして新しい変化には抵抗があるのではないかと思っていました。それが事実無根であったことはすぐに明らかになりました。彼らは、それぞれの時代に適応しながら、どんどん変わっていくことを伝統としている方たちでした。彼女が最も驚いたのは、礼拝に出席する人たちが目に見えて減ってきている今、彼らが教会の将来について、とてもよく考えていることでした。教会として機能し続けてほしいのはもちろんですが、もっともっと公共的な機能が加わるのも嬉しいこと、と考えていました。例えば、会議や文化的なイベントの場として使われることです。彼らは教会をとても大切に思っているので、それが末永く使われるようになれば嬉しい、と話しました。その言葉に彼女は打たれ、そこにある教会のホールと SOGK の事務所とを、どのように関係づけたら良いか、より一層深く考えました。
 「そのような場合、建築家はよく、ガラスの壁を使って全体を隔てるのですが、私はそうしませんでした。2、3階の廊下に高さ1mの手すりを使うことで、それらの階にある事務所は見えず、1階の教会に足を踏み入れた人は、上階が事務所になっていることには気づきません。ですから、教会の空間に入った雰囲気は今までのままです。2階3階に行くと、そこでは全く違った世界に出会います。デスクで仕事をしている人には、階下の教会の空間は見えません。しかし、廊下に出てコピーを取りに行ったり、コーヒーを飲みに行ったりする時には、教会内部の空間を体験できます。教会と事務所は空間を共有しているのですが、それぞれの活動をしている時には、お互いが視角に入ることはありません。
 教会の方々にも協会の方々にも、心地よく使っていただいているようで、とても嬉しく思っています。

 
 少し前に戻りましょう。トランキールは以前、フローニンゲンのウォールハウスでレジデンスしていた柳本明子さんを取材しましたが、森子さんはその明子さんとのコラボレーション作品も制作しています。どのようにして、コラボレーションに至ったのでしょうか。
 
 この質問の答えは、様々な点で多くを語っていますが、最初の出会いは、柳本明子さんがアムステルダムのリートフェルト・アカデミーで学んでいた時でした。森子さんは、この若いアーティストのセラミックなどの作品をとても面白いと思い、交流を始めました。    
 このことについて、彼女は次のように語ります。
 「彼女はただ作品を制作するだけでなく、社会的な環境にも入って行き、そこから得たものを作品に取り入れていました。
 間もなく、フローニンゲンでの私のプロジェクトで何か一緒にしようという考えが浮かびました。彼女は、改修中の教会の工事現場で撮った写真やフローニンゲン市の町並みをインスピレーションにしました。リニー(先述のフローニンゲン市内の新興住宅地)に関しては、そこに移り住む人たちの古い家を訪問し、そこでの生活の思い出となるような作品を制作しました。
 その後私たちは、Den Bosch(デン・ボス)にあるヨーロピアン・セラミック・ワークセンター(EKWC)で、3カ月間一緒にレジデンスしました。私たちはそこで、建築のコンテクストの中でセラミックを様々に使う可能性を探求しました。彼女は個人や家族のドメスティックで日常的なシーンからアートを制作することに関心がありました。私自身は、セラミックの壁とその空間と光の遊びに、とても惹かれていました。私たちが一緒に制作したセラミックの壁には台所の二人がデザインされています。」
 
<左>
台所の二人がデザインされた
セラミックの壁。

吉良森子さんと柳本明子さんが
ヨーロピアン・セラミック・ワークセンター(デン・ボス)で 一緒にレジデンスして制作した作品。

写真:
Luuk Kramer ©
 
 将来のための具体的なプランはありますか、ご自身で一度建築したいと思っているものとか。
 
 森子さんはすぐに、関係者との親しいディスカッションによってプロジェクトを実現できた、フローニンゲンを挙げます。最終的にそれを使う人たちと話し合って、一緒に創造できるコミュニティが、とても気に入っています、と強調します。比較的小さなコミュニティであっても、です。彼女がこれまで主として自治体でのプロジェクトに関わってきたことを、それに付け加えます。そして、最近日本に行って気付いた、日本の地方のコミュニティのドラスティックな変化、そこに住んでいる人たちやそこでビジネスを始めようとしている人たちの参画を話します。それが地方自治体によるトップダウンではないことを、彼女は実感しました。トップダウンのプロジェクトも面白いけれど、ボトムアップのプロジェクトにも関わっていきたいと思っています。都市でだけでなく、田舎の小さな村でも ...
 
 もう一度、フローニンゲンのことに戻って。彼女はどのくらいフローニンゲンを知っているのでしょうか。
 
 「フローニンゲンについて話す前に、アぺルドールン、Deventer(デーヴェンター)や、最近では Almere(アルメーレ)など、オランダのいろいろな所で仕事をしてきたことを言っておきます。フローニンゲンに関しては、フローニンゲン市だけです。最初にフローニンゲンに行った時、電車で草原の広がった景色の中を走った後、最後にそのエリアで一番大きな都市が現れることに、とても魅力を感じました。市を中心にしてオープンな風景が広がっているので、都会の安心感がある一方、市から少し出ると田舎の景色も楽しめます。ある時車でレーンス(フローニンゲン州北西の村)を通ったことがありました。永遠と結びついているような目の前に広がる風景に、とても感動しました。地平線に誰も見えない、自然の美しさ ... とても特別なものです。ランドスタット(オランダ西部の大都市圏)では全部が都市化していて、都市の間にそのようなオープンな風景を見ることは出来ません。」
 
 
>>Moriko Kira Architect
 
>>Stichting Oude Groninger Kerken (SOGK)
 
>>柳本明子さんのページ
 
 
 



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