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東京から五重奏団「Salle Gaveau(サルガヴォ)」
Grand Theatre Groningen で観客を魅了 |
フローニンゲン市のフロート・マルクトにあるGrand Theatre(グランドシアター) は5月の終わりに30周年を祝い、この新しい音楽シーズン(夏は戸外を楽しむので劇場の多くが閉じられ9月に再オープン)を「日本のタンゴのオールスター・バンド、Salle
Gaveau(サルガヴォ)」で始めました。
著名なギタリスト鬼怒無月が率いるこのバンドはヨーロッパツアー中で、ドイツからフローニンゲンへ足を伸ばし企画されました。
それは、今回オランダで唯一の公演であるだけでなく、バンドのメンバーたちにとってもフローニンゲン市との初めての出会いを意味しました。
サルガヴォは、鬼怒無月の他、喜多直毅のバイオリン、林正樹のピアノ、佐藤芳明のアコーディオン、鳥越啓介のコントラバスで構成されています。
歴史あるパリのコンサートホール「サルガヴォ」にちなんだ名前のバンドの出発点は、アルゼンチンタンゴのアーチストであり作曲家のアストル・ピアソラの音楽です。
ピアソラは至る所でタンゴの偉大な革新者と見られていますが、その革新を誰もが有難く思ったわけではありませんでした。
サルガヴォがもたらしたタンゴ - ほとんどがメンバーによる作曲 - も又、革新として見ることが出来ます。5人の卓越した音楽家たちは、タンゴに、ロックやジャズ、クラシック音楽やフランスのシャンソンからの影響を織り交ぜています。
2007年、フランスの「Rock in Opposition」フェスティバルで彼らがヨーロッパデビューした時、バンドリーダーの鬼怒無月は「This is tango punk rock.」 と言いました。
この言葉に部分的に同意しますが、彼らを表現するには不十分だと思えます。サルガヴォは、まだもっと、それ以上です。とても気高い音楽性を持ち、5人はそれによって、様々な感情を生き生きと描きだすことに成功しています。
鬼怒無月は音楽シーンで知られた存在で、名高い日本のロックバンドである「ボンデージフルーツ」や「Warehouse」「Coil」「ERA」などを結成しました。また1994年には、バイオリン奏者の勝井祐二と共に自身のレーベルを発足、アルバムを発表しています。
バイオリン奏者喜多直毅は、タンゴの国アルゼンチンで名声を築きました。彼はアストル・ピアソラ五重奏団で演奏していたフェルナンド・スアレス・パスの下で学び、帰国後に自身のタンゴバンド「The
Tangophobics」を結成しています。
アコーディオン奏者佐藤芳明は、ジャズの世界で既に十分活躍しており、そのユニークな楽器の演奏方法で称賛を得ています。佐藤はパリの C.L.M.
Ecole de Jazz で学び、ダニエル・ミルに師事しました。
ベース奏者鳥越啓介は、伝説的ジャム・バンドPHAT のメンバーであったことでよく知られ、2001年東芝 EMI Blue Note レーベルよりメジャーデビューしています。
素晴らしいテクニックのピアノ奏者林正樹も「宴」「KOKOPELLI」「アルカイック」「クアトロシエントス」など自己のユニット他で活躍、2008年にはソロアルバム「Flight
for the 21st 」をリリースしています。
彼らがフローニンゲンにやって来て、まず人目を引いたのは、その慎ましさです。演奏中ずっとある姿態が見られました。ここでよく見られるジェスチャー、観客との戯れはなく、愁いを帯びた目が秘密の何かを見つめているように見えます。それは、感動が込められた激情あふれる演奏とは、全く対照的なものです。日本人の性格に合ったものと思えます。それは、スタカート部分のような、バンドが張り詰めたユニゾンを極めて規律正しく演奏する中にも、認められます。そのために何かが欠けているということではなく、その反対です。五重奏団は音楽自体を優先させ、ただ彼らの楽器に語らせようとします。彼らは時々、ほとんど真似できない方法で、それを成し遂げます。パンパの静けさや、恋の燃えさかる炎へと誘う、素晴らしいソロの数々が楽しめました。
堅実ですが、その構成は決して退屈ではありません。サルガヴォは更に、テーマやリズムを多彩に変化させ、コンサートの初めから終わりまで、驚かせ魅了します。
フローニンゲンでの何曲かで、抜群に押し上げるピアノ演奏と時々本物のジャズの宵を思わせるベースのパート、極めて洗練されたギター演奏が織り成すキャンバスの上に、アコーディオン奏者とヴァイオリン奏者が驚くほど美しいソロを描きます。特に喜多直毅は、自身と楽器が溶け合って一つになり、聴衆にエクスタシーをもたらします。それはまた、その姿態が少し変化する瞬間でもありました。喜多がその音楽を全身で表現する時、パントマイム演技のようにも見え、アチェレランドの部分はほとんど信じられない境界へ導き、曲の終わりにはその楽器を狂ったように燃え立たせます。
では、ロックは? バンドリーダー鬼怒無月のギターが、それに合った音色を奏でる時、それが明らかになります。
客席の観客は熱狂し歓声と拍手喝采が起こり、最後の曲が演奏されるとアンコールを求めます。そのような絶賛に、サルガヴォはにかんだように再登場し、もう一曲演奏します。拍手に答え、今度は彼らが大歓迎のフローニンゲンの観衆に向けて拍手を返し、コンサートは終わりました。
これが本当に心からのものだったことは、その後すぐに出口で販売されたサルガヴォの最新アルバム『La Cumparsita』が、数分の内に完売したことからも、分かります。
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「La Cumparsita」は、2010年にタワーレコード社から発売されました。
このCDには、佐藤芳明が編曲したヘラルド・マトス・ロドリゲス作曲のワールドヒット曲「ラ・クンパルシータ」の他、9曲の自分たちの作品が収録されています。鬼怒無月、喜多直毅、佐藤芳明、鳥越啓介がそれぞれ作曲した日本のタンゴです。
彼らは才能あふれる演奏家であるだけでなく、作曲家としても卓越しています。それがサルガヴォの全身です。
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鬼怒無月にヨーロッパツアーについて尋ねました。「それぞれいい感じで終えることができました。」という答えが返ってきました。
では、グランドシアターでの公演は? 観客に感動した、と無月は言います。「お客さんの聞き手としての懐の深さと熱さに感動しました。音楽をやっていて良かったと思います。」
フローニンゲン市自体はどうだったのでしょうか?「フローニンゲンは素敵な街でした。ほんの少ししか滞在出来ませんでしたが、また是非行きたいと思います。」
サルガヴォが再びフローニンゲンにやって来たら、疑いなく、多くの音楽愛好家たちと大きな喜びを共にすることでしょう!
>>サルガヴォ (myspace)
>>フィーチャリング 大友良英 - グランドシアター・フローニンゲン
© 2010 Trankiel
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