Trankiel  Groningen - Japan
Welkom  Terug in de tijd Japanners in Nederland Groningen en Japan Cultuurverschil Japan Groningen  
 ようこそ むかし へ オランダ の 日本人 フローニンゲン と 日本 文化のちがい 日本 フローニンゲン  
 
    田崎裕子さん 

        フローニンゲンと出会う
 
 18時間以上かかった旅行の後、夜早く(まだ昼間と同じような明るさです)に、田崎裕子さんはデルフザイル駅に着きました。そのほとんど見捨てられたような駅に降り立った時、無意識にしても「一度フローニンゲンを訪れたい」と書いたメールのことが彼女の頭を過ぎったに違いありません。後でそのことが話に出た時、皆で一緒に笑いました。
 
 すぐ周囲に慣れてきた彼女は、よく自転車で出かけるようになりました。ダムステルディープにかかる小さな橋から吊り台所をスケッチするため、アピンハダムへ自転車で。堤防に行き、草の上に腰を下ろして、そこで草を食んでいる羊たちを観察します。又、デルフザイルから数キロのヴィアダの村マルスムでも、彼女はよく見かけられました。そこにはとても良く保存されている12世紀からの教会があります。全体が煉瓦造りで、俗に「修道士と修道女」と呼ばれていた凹凸瓦が使われた半球形の屋根がついています。
 
マルスムの教会 写真:ヨハネス・ドールンボス
 
 田崎裕子さんは70年代、聖ドミニコ会の牧師で世界的に有名な版画家のアルベルト・カルペンティール氏のアトリエでデッサンを学びました。その後続けて彼のもとで油絵を3年間学び、その過程でキャンバス地以前の絵画の下地に興味を持ちました。ちょうどその頃に、イタリアに8年間滞在し日本に帰国したばかりの石原靖夫氏の「イタリアルネサンス期のテンペラ画の実習」の講座に参加して、以降彼女は石膏下地での卵黄テンペラ画を試みます。
 石原靖夫氏は1943年に京都で生まれ、東京藝術大学を卒業後国立ローマ修復研究所で学び、シモーネ・マルチーニの『受胎告知』(1333)を6年かけて復元模写した後、帰国したところでした。その絵は現在金沢美術工芸大学に所蔵されています。又チェンニーノ・チェンニーニ著『絵画術の書』も共訳し、イタリアの題材を多く独自のテンペラ技法で描いています。
 
百日草 瓢箪
 
 彼女は8年間彼のアトリエで学びました。イタリアルネサンスの初期まで使われていた石膏下地の黄金背景テンペラ画、羊皮紙、イタリア古典額を学びます。キャンバス地以前の下地に興味を持った事が、裕子さんがテンペラを最終的に選んだ理由の一つです。北方ルネサンスやイタリアルネッサンス期に関心を抱いたことも、その理由でした。その習得や意味について、彼女自身が語ります。
 「美術の歴史は、その技法も含めて、その国の成り立ちや自然環境、宗教と関係していると思います。例えば、テンペラ画はイコン画と通じるものがあります。私は宗教的な観点からではなく、テンペラ画と日本画との共通性を発見し興味を持ち、この技法を選びました。」
 それがかなり手間のかかる作業であることを、彼女は話します。石膏下地作りや、色の出し方は、古典の模写をする中で習得します。下地に金箔を貼り磨く事に習熟するには時間がかかります。 
 
 どうして彼女は絵を描くのでしょうか。あるいは、絵を描くことは他のどのような喜びと比較できるのでしょうか。彼女はその問いに答える代わりに、しばしの沈黙の後次のように言います。「どうして絵を描くことを止めないで続けているのか... 悩み、あせり、不安などがあっても... それを画家は言葉でなく、絵を見てもらうことで答を出しているのだと思います。」
 
 画家田崎裕子さんは、東京と神奈川でテンペラ画教室も開いています。東京生まれ東京在住の彼女は、冬になると山スキーに出かけます。又草花を育てるのが好きで、その育つ過程を観察し世話することを楽しんでいます。もちろん画家としての仕事が一番大切で、東京、川崎、仙台、福島、山形、和歌山などで数多くの展覧会を成功させている他、ニューヨーク・アンティクアリアン・ブックフェア(アメリカ)にも作品を出品しました。
 
 あまりにも早く別れの日がやってきました。再び同じプラットホームで、フローニンゲン行きの電車を待ちながら、ここで過した時間について話します。彼女の印象が新鮮なうちに、フローニンゲンをどう思ったか、聞きたいと思います。
 裕子さんは言います。「美しくて、静かなところですね。ここだけの話ですが、少し年配の人には理想的なところだと思いました。皆自分の生活を、又お互いの生活を大事にしている、成熟した社会だと感じました。若い人は物足りなく思うこともあるかもしれないですけれど。」
 若い人に何が物足りないのでしょうか。東京のような歓楽街がないことなのでしょうか。
「いいえ、そのような意味ではありません。上手く言えませんが、若いときは、雑踏に紛れて安心や孤独を感じたいような気持ちになることがあるのではないでしょうか。私自身はもうそんなことはしないのですが、若い人は時々そうしたいのではないでしょうか。」
 一緒に過すのはこれまで。フローニンゲンは、画家の彼女の心を引きつけることが出来たのでしょうか?
「もちろんです。いろいろな点で惹かれました。描きたいと思う植物や石の建物。意外だったのは、得意でない動物のスケッチをしたこと。ペットでない動物がたくさんいたので、自然に描き始めました。スケッチしている間中、羊と長い間見詰め合いました。印象的だったのは、夕日が沈むころの空です。何と素晴らしい色!それから夜堤防を歩いた時に干潟から聞こえてきた様々な生き物の声も心に残っています。
 その風景の中を自転車で走っている時、空気がとても気持ちよく、北海道の夏に近いと思いました。」

 
 電車がゆっくりと駅に入ってきて、あと数分でお別れです。 その続きは? かなりの時間を経て、裕子さんからテンペラ画の写真が送られてきました。ここでの滞在中のスケッチをもとにした作品です。
 彼女は書いています。「まだ十分描けていません。もう一度フローニンゲンを訪れたいと思っています。」
 
 次回のデルフザイル駅への到着は、どれだけ違ったものになるのでしょうか...
 
 
 
フローニンゲンへの訪問から生れた

田崎裕子さんの作品
 
           マルスムの教会 (左:額付き)
                                   
                                            羊皮紙、紫紺染め    140mm×110mm
 
 









変らぬまま (額付き)

    
麻紙に石膏

    F8(455mm×379mm)











アヒル

  羊皮紙、紫紺染め

  
186mm×108mm














羊のいる風景 (額つき)

  羊皮紙

  
165mm×130mm
 
 
作品の写真のコピーライトは、すべて田崎裕子さんに属しています。
無許可の転載を禁止します。

 
 
  >>テンペラ画 田崎裕子 のサイト
 
 
 
 
      
 



田崎裕子テンペラ画教室展
 
 
裕子さんは自身が描く他にも、テンペラ画教室を主宰し、それらの教室展も成功を収めています。
彼女からその最新の教室展のカードが2月7日に届きました。
 
田崎裕子テンペラ画教室展
模写と創作Ⅱ 
2009年2月19日(木)~25日(水)
am11:00~pm7:00 (最終日pm4:00まで)
Gallery Concept 21(港区北青山)
作品出品
黒木正人、小坂弘子、中尾園子、長野美佐子
長安さほ 早川えり子、早川君江、山崎武子
弓場佳代、渡辺俊子
 
同ギャラリーに於いて、引き続き彼女の他の教室の展覧会が開かれます。
テンペラ画教室のページには教室作品も紹介されています。
 
 
 
田崎裕子 Ⅱ へ
 
 
 



© 2008 Trankiel